進化する「ノンアル」「ローアル」ビール 16銘柄飲み比べてみた

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進化する「ノンアル」「ローアル」ビール 16銘柄飲み比べてみた AERA dot.

 あたしを酔わせてどうすんのヨ……は過去の話。飲んでも酔わない、でもおいしい! 5分でわかる最近のノンアル事情だ。

 最近まわりで、ビールテイスト飲料、いわゆるノンアルコールビール(以降はノンアル)を飲んでいる人が、なんだか増えている。



 よくある理由としては、「健康診断でγ−GTPが高めだったから」「ダイエット中だから」などの生活習慣病関連や、妊娠、授乳といったおめでた系。また「親の介護で、いつ何があるかわからないから」「リストラされて夜勤のある仕事に転職」など、世相を映したものもあれば、「酔って骨折し、妻に禁酒を命じられたから」なんていう、しょうもない理由も。ちなみにこれは、うちの夫だ。

 自分の知る限り「ビールより、ノンアル」という声はさすがに聞かないが、さまざまな事情でアルコールを控えざるをえなくなったビール好きの人々を、ノンアルがいっとき癒やしているっていうのは、本当だと思う。

●飲酒運転厳罰化で注目

 一方、ノンアルのほうも需要に応えて進化している。アルコール分ゼロ、カロリーゼロからプリン体ゼロ、糖質ゼロまで、機能が充実した商品が各種登場。おこづかいを削減された知り合いのおじさんが「新ジャンルや発泡酒が嫌いなので、ビールが買えないときは、もっと安いノンアルを買う」と話すレベルまで味も向上しているらしい。

 ここで、そもそもノンアルコールビールって何?からおさらい。国によって基準は変わるが、日本では「アルコール度1%未満」の飲料は「ノンアルコール」を名乗ることができる。つまり1%未満のアルコール度で、ビール風味がする飲料のことだ。

 その歴史は意外に古く、広く愛飲されるようになったのは、20世紀初め、禁酒法時代のアメリカだ。ビールを水で薄めてアルコール分を基準以下に抑えるという製法だったが、これがビールを取り上げられた国民に大ヒット。ノンアルのエポックになったと言われている。

 一方、日本で注目が集まったのは、2002年のこと。道路交通法の改正で飲酒運転の罰則が厳しくなったことがきっかけだった。その後09年、キリンビールが「キリンフリー」を発売したことで、人気が爆発する。

●各社が「0.00%」競う

「キリンフリー」で何より注目されたのは、そのアルコール度数だ。それまでのノンアルには、1%未満とわずかながら、アルコールが入っているのがお約束。世界で初めて「アルコール度数0.00%」を実現した真のノンアルの誕生だった。

 キリンビール・マーケティング部でノンアルコールビールチームを統括する阿部学さんが、こう教えてくれた。

「ノンアルコールビールの製法には大きく2種類あります。ひとつはビールと同じ製法で一度発酵させてから、アルコール分を除去などする方法。もうひとつは、発酵させることなく、ビールの味を一から作り上げていく方法です」

 かつてノンアルの製法で定番だったのは、「アルコール分を除去する方法」のほうだが、ビールに近い味を楽しめる一方で、「アルコール分を完全に除去できない」という欠点があった。

 そこで、発酵させない製法でビールテイストを再現したのが「キリンフリー」だ。発酵しないので、アルコール分は果てしなく「0」。ノンアルのアルコール表示が、「0.00%」のように、コンマ2〜3桁に変わったのも、この商品がきっかけと言われる。同時に少しでもアルコール分が残るノンアルを「ローアルコール」と呼んで、区別する動きも広まった。

 その後、各社が0.00%の商品開発にしのぎを削り、地ビール業界も参入してノンアル戦争が勃発。数年後、「キリンフリー」のシェアを切り崩し、トップに躍り出たのは、アルコール、カロリー、糖質、プリン体という四つをゼロにしたサントリー「オールフリー」だった。

「10年の発売から7年で、売り上げが3倍に伸びた、成長ブランドと言えます」(サントリー広報部)

 同社の市場分析では、「仕方なく」ノンアルを飲むのではなく、ノンアル自体を楽しむ人も増えているそう。

「ビールのおいしさはもちろん、飲んだ時の楽しい気分をもっと自由に感じていただけるような飲み方を提案していきたい」(同)

●「麦汁使わず成分再現」

 オールフリーのCMにチラッと出てくる、氷を入れてキンキンに冷やす飲み方。あれもそのひとつだという。

 続いて16年からノンアル市場のシェアトップに躍り出たのが、12年発売のアサヒビール「ドライゼロ」だ。

 これまでのノンアルで原料として使われていた(発酵させない)麦汁。

「その麦汁を使わずにビール成分を再現したため、余分な甘味や雑味を抑えることができた」(アサヒビール広報部)

 スーパードライを彷彿とさせる「ドライなのどごし」で、現在の市場では一番人気を誇っている。

 そんななか、老舗キリンビールも今年、ノンアルの新ブランドを立ち上げた。「零ICHI」だ。キリンのビール「一番搾り」で使われるのと同じ、一番搾り麦汁だけを使い麦のうまみを引き出す「一番搾り製法」でつくる。

「4月の発売時、年間140万ケースを目標にしていましたが、好調に推移したので、7月に年間目標を210万ケースに上方修正致しました」

 とキリンの広報担当。夏の間も順調に販売を伸ばしたため、「さらなる上方修正も検討しています」(同)と、売り上げは絶好調らしい。

 と、たっぷりノンアルについての豆知識を仕入れたところで、今回の本題へ。ネットで買い集めた世界のノンアル計16種類を編集部に用意。大酒飲み、下戸、禁酒中など、アルコールとさまざまな関わりを持つ編集部員ら17人に飲んでもらい、その味をジャッジしてもらった。

●品揃えはネットが充実

 ちなみにデパ地下や大手酒販店でも、ノンアルの品揃えが充実しているところは少なく、外国産や珍品を味わいたいときは、ネット通販が一番の近道。酒販店がやっているネットショップのほか、オフィス用品の通販サイトや、自然食品系のショップでも扱っているのは、ノンアルならではだ。

 値段もお値打ち。酒税がかからないため清涼飲料程度で、1本100円前後が中心。今回購入した商品のなかでもっとも安いものは、「ブローリー プレミアムラガー」と「ヴェリタスブロイ プレミアムピルス」などの1本当たり70円ちょっと(ケース買いの場合)。もっとも高いものでも、「エルディンガーアルコールフリー」(瓶)の1本220円前後だった。

 その分デパ地下で、ビールに合うチキンや餃子などのつまみを豪勢に用意して、いよいよ、ノンアルで「カンパーイ!」。

 まあ、十分に予想していたことだが、正直、あんまり盛り上がらない。もうひとつビールのようにがぶがぶ飲めないのが、ノンアルの宿命。次第に炭酸飲料をがぶ飲みしたときのような満腹感に襲われ、さらにシーンとしたパーティーに。

●個性的な味わい楽しむ

 ビールなら1リットルでも中ジョッキ2杯弱。平気で飲めてしまうのに、この不思議。そういえば、前出、キリンビールの阿部さんも言っていたっけ。

「ビールには胃を活性化する働きがあると言われているので、たくさん飲めるというのはあると思います」

 偉いなあ、ビールは……いや、本物のビールへのそんな恋慕は振り払って、パーティー続行! 代わる代わる飲んでいくと、それぞれかなり個性があることもわかった。

「アルコール0.00%の国産は味が複雑すぎて、ひとことで表現できない物が多い。対してアルコール分がわずかでも残る外国産はシンプルな味わい。アルコールが入っているので当たり前ですが、味もビールに近いですね」(普段ビールは少量ずつ各種飲むタイプの庶務氏)

 というように、まず「ウエストエンド・エキストラ・ライト」(オーストラリア)や「ブローリー プレミアムラガー」(同)といった、アルコール0.9%とギリギリまでアルコールが入った「ローアルコール」系が人気を集めた。

 もうひとつ発酵過程を経て、0.01%程度のアルコールがある「ヴェリタスブロイ プレミアムピルス」(ドイツ)も「まあおいしいが、後味はいまひとつ」「泡立ちはいいが、水っぽい」など、「ただし書き」付きではあるが、人気になっていた。

 国産メーカーでは、各社、おいしいノンアルを求める研究を今なお続行中。発酵という自然の偉大な作用が生む味わいを、人知が超える日は、目の前だ。

(ライター・福光恵)

※AERA 2017年10月9日号


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